ルキウス・カエキリウス・メテッルス・デルマティクス(ラテン語: Lucius Caecilius Metellus Delmaticus、- 紀元前104年)はプレブス(平民)出身の共和政ローマの政務官。紀元前119年に執政官(コンスル)、紀元前114年から紀元前104年まで最高神祇官(ポンティフェクス・マクシムス)を務めた。デルマティクスというアグノーメンはダルマティアでの勝利に由来する。

出自

カエキリウス・メテッルス家の出身。伝説によれば、カエキリウス氏族は火の神ウゥルカーヌスの息子で、プラエネステ(現在のパレストリーナ)の建設者であるカエクルス(en)の子孫とする。メテッルス家は紀元前3世紀の初めに元老院に議席を得た。最初に執政官となったのは紀元前284年のルキウス・カエキリウス・メテッルス・デンテルである。パトリキ(貴族)であるセルウィリウス氏族と協力し、メテッルス家は紀元前140年代から元老院における最も有力な家系となった。特に紀元前123年から紀元前109年にかけては6人の執政官を出している。

デルマティクスは紀元前142年の執政官ルキウス・カエキリウス・メテッルス・カルウスの長男であり、クィントゥス・カエキリウス・メテッルス・マケドニクスのいとこである。弟にはクィントゥス・カエキリウス・メテッルス・ヌミディクスがいる。

経歴

デルマティクスに関する記録は紀元前119年に執政官に就任した際が最初であり、それ以前は不明である。逆算すると、紀元前122年以前には法務官(プラエトル)を務めていたはずである。

同僚執政官は、やはりプレプスのルキウス・アウレリウス・コッタであった。同年にガイウス・マリウスが護民官となっているが、これはマリウスがカエキリウス氏族のクリエンテス となったか、あるいは一時的に支援を受けたことが大きい。まもなくマリウスは富裕階級の投票権を制限する法案を提出した。プルタルコスによれば、ルキウス・カエキリウスという人物がこれに反対したが、マリウスはかってのパトロヌス(庇護者)を告訴し、法案を成立させた。ただし、プルタルコスが書くルキウス・カエキリウスはデルマティクスではないかもしれない。

執政官の任期が完了すると、デルマティクスは前執政官として、ダルマティアに赴任する。凱旋式をどうしても実施したかったデルマティクスは、理由もなしに現地人との戦争を始めた。戦争を望んでいなかったダルマティアは降伏し、ローマ軍はサロナ(現在のソリン)で冬営に入った。紀元前117年にローマに戻ると凱旋式を実施し、ダルマティアに対する「勝利」を祝してデルマティクスのアグノーメンを得た。また、勝利を記念してディオスクーリ神殿を拡張するとともに、塗装を新たに行って像をいくつか建てている。

紀元前115年に、ルキウス・カエキリウス・メテッルスという人物が、グナエウス・ドミティウス・アヘノバルブスと共に監察官(ケンソル)となっている。これはデルマティクスか、甥のルキウス・カエキリウス・メテッルス・ディアデマトゥスと思われるが、カピトリヌスのファスティのこの部分が欠落しているため、何れかを断定はできない。メテッルスとアヘノバルブスは元老院議員32名を除名した。この中には前年の執政官ガイウス・リキニウス・ゲタも含まれており、デルマティクスの娘と結婚していたマルクス・アエミリウス・スカウルスは元老院筆頭(セネートゥス・プリンケプス)となっている。

同年 あるいは翌年、最高神祇官(ポンティフェクス・マクシムス)であったプブリウス・ムキウス・スカエウォラの死去に伴い、デルマティクスは終身職である最高神祇官に就任し、紀元前104年に没するまでその職にあった。この職にあっては、ウェスタの処女の姦通罪に関する調査を行っている。

子孫

デルマティクスの娘はマルクス・アエミリウス・スカウルスの再婚相手となり、またルキウス・コルネリウス・スッラの4番目の妻となっている。

小説

デルマティクスはコリーン・マッカラの "The First Man in Rome"の登場人物の一人である。

脚注

参考資料

古代の資料

  • アッピアノス『ローマ史』
  • アスコニウス・ペディアヌス
  • エウトロピウス『首都創建以来の略史』
  • ティトゥス・リウィウス『ローマ建国史』
  • プルタルコス『対比列伝』
  • キケロ『演説集』

研究書

  • Broughton T. "Magistrates of the Roman Republic" - New York, 1951. - Vol. I. - P. 600.
  • "Caecilius 138" // RE. - No. III, 1 . - P. 1212-1213 .
  • Labitzke M. "Marius. Der verleumdete Retter Roms" . - Münster, 2012. - 544 p. - ISBN 978-3-89781-215-4 ..
  • Van Ooteghem J. "Gaius Marius" - Bruxelles: Palais des Academies, 1964. - 336 p.
  • Wiseman T. "Legendary Genealogies in Late-Republican Rome" // G & R. - No. 1974. - No. 2 . - P. 153-164 .
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  • Korolenkov A., Smykov E. "Sulla" - M .: Young Guard, 2007. - 430 p. - ISBN 978-5-235-02967-5 .
  • Trukhina N. "Politics and politics of the "golden age" of the Roman Republic" - M .: Publishing house of the Moscow State University, 1986. - 184 p.

関連項目

  • カエキリウス・メテッルス家
  • 共和政ローマ執政官一覧
  • 凱旋式のファスティ

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