坪井 智也(つぼい ともや、1996年3月25日 - )は、日本の男子プロボクサー。帝拳ボクシングジム所属。静岡県浜松市出身。日本大学卒業。元自衛隊体育学校ボクシング班所属の幹部自衛官(最終的な階級は3等陸尉)。日本ボクシング史上初の世界選手権王者。インファイト、アウトボクシングいずれも世界トップレベルのテクニックを持ち、速射砲のような連打とカウンターショットも併せ持った万能型右ボクサーファイター。
来歴
アマチュアボクシング
幼少期~高校時代
静岡県浜松市で生まれ、小学2年生から小学5年生まで極真空手に励んだ(松井派で、最高成績は少年の部・全国3位)。小学6年生より浜松市のアマチュアボクシングジムリードでボクシングを始めた。静岡県立浜松工業高等学校入学後はボクシング部に所属し、インターハイ3位、国体準優勝などの結果を残した。
日本大学時代
2014年、日本大学に入学すると一気に頭角を現し、11月の全日本選手権では後にプロの世界王者となる谷口将隆と京口紘人をライトフライ級の準決勝と決勝で立て続けに破り初優勝を果たした。その後、2015年、2016年、2017年の全日本選手権において、いずれも決勝で柏崎刀翔を破り全日本4連覇を果たした。しかしながらリオ五輪予選代表は、国際大会での経験値や戦術の観点から坪井ではなく柏崎刀翔が選出された。
2017年7月、史上5人目となる関東大学ボクシングリーグ戦における大学4年間20戦全勝無敗記録を達成し、最優秀選手賞を獲得した。
自衛隊体育学校時代
2018年から自衛官となり、自衛隊体育学校ボクシング班に所属。2020年東京オリンピックのボクシング競技実施階級からライトフライ級がなくなるため、フライ級に階級を変更した。しかし2019年の全日本選手権フライ級決勝において、田中亮明との激闘の末2-3のスプリット判定で敗れ、バウトレビュー(判定への異議申し立て)を適用するも判定は覆らず、東京オリンピック予選代表権を逃した。
日本史上初の世界選手権王座獲得
2021年11月、セルビアのベオグラードで開催された世界選手権にバンタム級(54kg)日本代表として出場し、リオ五輪フライ級金メダリストであるシャホビディン・ゾイロフを筆頭に、ビラル・ベナマ、マフムド・サビルカンといった世界トップクラスの強豪アマチュアボクサー達を次々と破り優勝し、金メダルを獲得。同大会においてウェルター級で金メダルを獲得した岡澤セオンと共に、日本ボクシング史上初の世界選手権王者となった。
2022年6月、日本ボクシング連盟年間表彰において、2021年度優秀賞を受賞した。
2022年11月、ヨルダンのアンマンで開催されたアジア選手権のフライ級(51kg)に出場。準決勝でカザフスタンのサケン・ビボシノフに敗れ銅メダルを獲得した。
パリオリンピックへの道
2023年2月26日に行われた2024年パリオリンピック大陸予選を兼ねる杭州アジア大会の51kg級代表決定戦(ボックスオフ)で荒竹一真に勝利し、アジア大会出場を決めた。
2023年5月、ウズベキスタンのタシュケントで開催された世界選手権の51kg級(フライ級)に出場。順調に勝ち進むも準々決勝で地元ウズベキスタンの英雄であるリオ五輪ライトフライ級金メダリストハサンボイ・ドゥスマトフに判定負けを喫した。
2023年10月、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響で1年遅れて開催された杭州アジア大会の51kg級に出場。銀メダル以上の成績でパリ五輪への出場権を得ることの出来る大会だったが、準決勝で再びハサンボイ・ドゥスマトフに判定負けを喫し、同大会でのパリ五輪出場権は獲得できなかった。
2023年11月26日、パリ五輪予選代表を懸けた全日本選手権に出場し、フライ級決勝で大会2連覇中だった自体校の同門である牧野草子に判定勝利し、6年ぶりの全日本制覇を果たすと同時にパリ五輪予選代表権を獲得した。
2024年3月11日、イタリアのブスト・アルシーツィオで開催されたパリ五輪世界1次予選の51kg級に日本代表として出場したが、3回戦でコロンビアのユベルヘン・マルチネス(リオ五輪ライトフライ級銀メダリスト)に敗れ、今大会でのパリ五輪出場権獲得を逃した。
五輪最終予選棄権~アマチュア引退表明
2024年5月、坪井はパリ五輪世界最終予選のため開催地であるタイのバンコク入りをしていたが調整が上手くいかず、後日、日本ボクシング連盟から『「必要な体調を準備できない」と本人及びチームで判断し、医学的な見解をふまえて棄権いたしました。』との発表があった。体調不良のため試合に出場することができなくなった坪井が同大会を棄権することが発表された。これにより五輪出場権獲得の可能性はなくなり、パリ五輪出場への道は完全に消滅した。世界選手権を制するほどの高い実力を持ちながらもオリンピック出場は3大会連続で逃す形となった。
2024年6月6日、坪井が自身のSNSで「アマチュアボクシング引退致します。沢山の人に愛して頂き、応援して頂けた事が、自分の人生に置いて大きな財産になりました。紆余曲折ある競技人生で、期待に応えれ無い事も多かった。才能は全く無かったけど沢山の支えが合って、長く競技を続ける事が出来ました。本当に有難う御座いました。」と発信し、アマチュアボクシングにおける現役引退を表明した。また同年12月、自衛隊体育学校を退校する直前にも同様の意向を示した。アマチュア時代の通算戦績は106勝(10RSC)25敗であった。
プロボクシング
2025年1月27日、都内ホテルで開催された帝拳プロモーションによる会見の中で、坪井が帝拳ジムに所属して近日A級プロテストを受験の上プロに転向し、3月13日に両国国技館で行われる「U-NEXT BOXING2 トリプル世界タイトルマッチ」のアンダーカードでデビュー戦(8回戦)を行う事が発表された。プロではスーパーフライ級を主戦場にする事も合わせて発表された。2月6日、後楽園ホールにてプロテストが行われ、村田諒太に続く史上2人目のA級プロテスト受験・合格を果たした。2月19日、プロデビュー戦の対戦相手についてWBOアジアパシフィックバンタム級2位のブーンルエン・ファヨンと117ポンド(53.07kg)契約8回戦で対戦することが発表された。3月13日、上記興行内にてプロデビュー戦を行い、ブーンルエン・ファヨンに2R2分34秒TKO勝ちを収めた。尚、A級プロテストを受験の上、A級8回戦でプロデビューした選手は、坪井が日本ボクシング史上初だった。
人物・エピソード
- ロンドン五輪ボクシングミドル級金メダリストで元WBA世界ミドル級スーパー王者である村田諒太は、坪井・岡澤の世界選手権優勝を「偉業中の偉業」という言葉をもって称賛した。
- 1996年3月生まれだが、学年的には95年に振り分けられるので、日本ボクシング界で活躍する黄金の「1995世代」の一人として数えられている。
- 同世代の友人である堤聖也が井上拓真の持つWBAバンタム級世界王座に挑戦する際、スパーリングパートナーを買って出た。結果、堤聖也は井上拓真に勝利し第76代WBAバンタム級世界王者となった。
- 坪井の所属する帝拳ジムの本田明彦会長は「うちにきたアマチュア出身の中で坪井が最強ですよ」と、坪井のボクシングを絶賛している。
戦績
アマチュアボクシング
- 2011年
- 第65回全国高等学校総合体育大会ボクシング競技大会 - ピン級3位
- 2012年
- 第66回全国高等学校総合体育大会ボクシング競技大会 - ライトフライ級3位
- 2013年
- 第68回国民体育大会ボクシング競技 - 少年ライトフライ級準優勝
- 2014年
- 第84回全日本ボクシング選手権大会 - ライトフライ級優勝
- 2015年
- 第85回全日本ボクシング選手権大会 - ライトフライ級優勝(2連覇)
- 2015年アジア選手権 - 5位
- 第18回AIBA世界ボクシング選手権
- 2016年リオデジャネイロオリンピックボクシングテストイベント
- 2016年
- 第71回国民体育大会ボクシング競技 - 成年ライトフライ級優勝
- 第86回全日本ボクシング選手権大会 - ライトフライ級優勝(3連覇)
- 2017年
- 関東大学リーグ戦史上5人目となる「20連勝4年間無敗」を達成。
- 第72回国民体育大会ボクシング競技 - 成年ライトフライ級優勝(2連覇)
- 第87回全日本ボクシング選手権大会 - ライトフライ級優勝(4連覇)
- 2018年アジア競技テスト大会 - ライトフライ級3位
- 2018年
- 2018年アジア大会
- 東京五輪記念杯争奪戦 - ライトフライ級勝利
- 第88回全日本ボクシング選手権大会 - フライ級準決勝敗退
- 2019年
- 第89回全日本ボクシング選手権大会 - フライ級準優勝
- 2021年
- 2021年コンスタンチン・コロトコフ記念国際トーナメント男子57㎏級3位
- 第21回AIBA世界ボクシング選手権 - バンタム級金メダル(日本史上初の同選手権制覇)
- 2022年
- 2022年アジア選手権 - フライ級銅メダル
- 2023年
- 2022年アジア大会 - フライ級銅メダル(コロナの為1年遅れての開催)
- 第93回全日本ボクシング選手権大会 - フライ級優勝
※ アマチュアボクシング戦績 - 131戦106勝(10RSC)25敗
プロボクシング
- 1戦 1勝(1KO)無敗
脚注
関連項目
- 男子ボクサー一覧
- アマチュアボクシング日本王者一覧
- ボクシング日本代表選手一覧
外部リンク
- 坪井智也 (@tsuboi_tomoya) - X(旧Twitter)
- 坪井智也 (@tsuboi_tomoya) - Instagram
- 坪井智也の戦績 - BoxRec(英語)
- 帝拳ジム - 現在の所属ジム
- 自衛隊体育学校 - アマチュア時代に所属
- ボクシング世界選手権 金メダル 坪井智也選手 - 日本大学公式サイトより世界選手権優勝時の特集




